てんかんの治療 ~治療の考え方とお薬による治療~

てんかん
UnsplashHal Gatewoodが撮影した写真

てんかんと診断されるとまずはお薬による治療が始まります。お薬の治療とはどんなものなのか、治療の流れや副作用などについて解説します。

それ以外にもさまざまな治療がありますので、てんかんの治療について何回かに分けてご紹介していきます。

てんかんは治りますか?

てんかんについてはてんかんとはをご覧下さい。

てんかんと診断されるとまずお薬による治療が始まることが多いのですが、そもそもてんかんは治るのでしょうか?

てんかんの治療薬=抗てんかん薬は、てんかんを治すお薬ではなく、てんかんの症状を抑えるお薬です。かぜのときに処方される「咳止め」や高血圧のときに処方される「降圧薬」と同じ対症療法です。

てんかんの治療も抗てんかん薬(≒発作止め?)で発作を軽減(できればゼロ)します。年齢とともに治るてんかんであれば、咳の症状を軽くしているうちにかぜが治ることを期待するように、発作を抑えている間に治っていることを期待します。思春期以降の再発率の高いてんかんであれば、高血圧に対する降圧薬のように、抗てんかん薬を飲み続けて発作を抑えている状態を維持しながらてんかんと付き合っていきます。

治療に対する反応や治るかどうかに関して分類すると、以下の3パターンに分けられます。

  1. 薬により発作が抑えられ、そのうち治るてんかん
  2. 薬により発作は抑えられるが、治りにくく薬を飲みながら付き合っていくてんかん
  3. 薬により発作を完全に抑えることが難しく、他の治療も検討しつつ症状を軽減して付き合っていくてんかん

1と2は薬による治療のみとなりますが、3の場合は後ほどご紹介するお薬以外の治療も検討していくことがあります。

小児期発症の素因性てんかんは1が多く、思春期以降発症のてんかんは2が多いです。乳幼児期発症のてんかん性脳症や、もともと難治てんかんの原因となる基礎疾患をお持ちの方、なんらかの脳の病気の後遺症や構造の異常によるてんかんの方などは3のことが多いです(てんかんの分類参照)。

お薬による治療

抗てんかん薬の選び方

てんかんは原因も発作症状もさまざまなので、てんかんの分類にもとづいてオーダーメイドで抗てんかん薬を選択していきます。

まず、もっとも具体的な分類である症候群の診断までできた場合、その症候群によって有効な治療がガイドライン等で決められていますので治療が決まってきます。

症候群まで分類できない場合、全般てんかんか焦点てんかんかによって第一選択薬が変わってきます。

抗てんかん薬には、薬によって得意分野と不得意分野があります。主に全般起始発作を得意とする薬、主に焦点起始発作を得意とする薬、両方ともに効く薬などです。全般起始発作の中でもミオクロニー発作に対しては、ミオクロニー発作を得意とする薬がある一方で、ミオクロニー発作を悪化させる薬もあったります。そのため、発作の分類は非常に重要になってきます。

全般焦点合併てんかんの場合、一番抑えたい発作、一般的には強直間代発作などのもっとも危険な発作から優先して治療を決めていきます。

最近では新しい抗てんかん薬が増えて治療の選択肢がとても多くなってきました。てんかん専門医であれば同じ発作でも第一選択薬として使いたくなる薬は2~3種類以上は頭に浮かんでくるでしょう。その中から、患者様の年齢、性別、性格、家族構成や社会的状況等に応じて、副作用や剤型、用法を考慮して治療に用いるお薬を提案していきます。

抗てんかん薬による治療の流れ

毎日のように危険な発作があるなど発作抑止を急ぐ場合を除いて、どの薬を使うかが決まったら最初は少量からはじめ、2~4週間ごとにゆっくりと治療維持量まで増量します。

特にお薬を始めた最初の2~4週間が最も副作用が出やすい時期なので、お薬ごとに気をつけるべき副作用が出てこないか注意しながらゆっくりと増量していきます。

発作が起きなくなったらその量で維持し、定期的に副作用や薬の血中濃度の確認をします。

体重が増えたり薬の血中濃度が下がってきても、発作が再発したりしなければ基本的には投与量は変えずに維持します。ただし、難治てんかんなどで血中濃度の低下が再発に繋がりやすいと分かっている場合はその限りではありません。

逆に、十分に投与量を増やしても発作を抑えきれない場合は別の薬の追加や変更を検討していきます。2~3種類のお薬を使っても発作が抑えきれない場合はお薬以外の治療法も考えます。

3年以上発作がなければ減量~中止を検討すると書いてある教科書もありますが、本稿の最初に書いたように「お薬をやめられるかどうか、やめるべきかどうか」はどのような特徴のてんかんなのかによります。治りにくいてんかんの場合には中止を検討せずお薬を飲み続ける選択肢もあります。お薬を飲み続けることに不安や抵抗がある方もいらっしゃいますが、お薬を飲んで気をつけるべきポイントさえ抑えておけば制限なく日常生活を送ることが出来るようになることが目標です。

減量する場合は1/3~1/4ずつ半年程度かけて、再発しないかどうか、脳波が悪化しないかどうか注意しながら慎重に1剤ずつゆっくり減量します。

完全に中止したあとは半年~1年以内の再発が非常に多いため、脳波が悪化しないか注意しながら慎重にフォローします。

具体的なお薬ごとの使い方や副作用などに関してはまた別の記事で解説する予定です。

長くなるので今回はてんかんの治療に関する考え方と、お薬による治療の流れについて簡単に解説しました。

次回はお薬以外の治療についてご紹介します。

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