ガストー型小児後頭葉てんかん

てんかん
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概要

ガストー型小児後頭葉てんかんは小児期後半に発症する自然終息性てんかんであり、治療に対する反応は良好ですが、睡眠中に強い脳波異常を示すてんかん性脳症を併発することがあるため注意が必要です。

小児期に発症する自然終息性の後頭葉てんかんとしてパナイトポーラス症候群と並んで紹介されることの多いてんかんですが、発作や特徴は全く異なるものです。

好発年齢

生後15ヶ月から19歳(ピークは8-9歳)とパナイトポーラス症候群よりやや高年齢ではじめての発作を起こしますが、頻度は小児てんかんの1%未満、小児の自然終息性てんかんのうち数%と、比較的まれなてんかんです。

発作・症状

このてんかんの発作の特徴は視覚の症状です。覚醒時に急に始まり3分以内(長くても20分以内)に治まる視覚発作を認めます。この視覚症状は、いろいろな色の小さな円が複数出現し、視野の中を徐々に移動していくと表現されます。

こちらの文献にガストー型小児後頭葉てんかんの視覚症状を患者に書いてもらった絵が掲載されていますので大変参考になります。

Elementary visual hallucinations, blindness, and headache in idiopathic occipital epilepsy: differentiation from migraine
This is a qualitative and chronological analysis of ictal and postictal symptoms, frequency of seizures, family history,...

その他に、上記以外の幻視、目が見えなくなる、眼痛、まばたき、眼球偏位、頭痛、嘔気・嘔吐などが見られることがあり、発作後の頭痛とそれに伴う嘔気・嘔吐はしばしば認められます。

視覚症状のときは通常意識は保たれていますが、前述のような焦点起始発作から意識を失って全身のけいれんに進展することもあります。

発作は通常数分間と短く、主に日中に生じます。未治療では発作は連日のように起こることもあり、発作頻度が多いこともこのてんかんの特徴です。

診断

脳波検査では睡眠時に後頭部から棘波や棘徐波が見られます。ただ、脳波所見だけではガストー型以外の後頭葉てんかんとの区別は困難であるため、焦点性の脳波異常を認めた場合は頭部MRIで構造的異常の有無を確認した方が良いでしょう。

発症年齢、発作症状が典型的でなかったり、診察でなんらかの異常を認めた場合はガストー型ではない可能性を疑います。

また、脳波検査で睡眠中に連続した棘波を伴うてんかん性脳症が見つかることがあります。認知機能の低下などがみられる場合は必ず睡眠脳波検査を確認した方がよいでしょう。

片頭痛との違い

このてんかんの発作は視覚症状、頭痛、嘔吐が特徴であり、症状からは前兆のある片頭痛との区別が非常に難しいてんかんです。

全ての患者様で全く同じ視覚症状というわけではありませんが、片頭痛の視覚症状は無色の線状で数十分かけてゆっくりと伸展するのに対して、ガストー型の視覚症状は多彩な円形の光が急速に進展します。

参考:片頭痛の視覚症状 (Migraine Visual Aura by MAYO CLINIC)

また、発作全体の長さは片頭痛より短く、頻度は片頭痛より多く、意識障害やけいれん、眼球偏位など視覚症状や頭痛以外の症状を伴う場合はどちらかというとガストー型の方を疑います。

片頭痛と言われていても、持続時間が短い、頻度が多い、片頭痛の治療であまり頻度が改善しない、けいれんなどのその他の症状を伴ったことがある、という方は一度脳波検査を受けられるとよいでしょう。

治療

発症後2-4年以内に50-60%の患者で寛解し、90%以上の方でカルバマゼピンが著効しますし、その他の焦点てんかんに有効な薬剤も効果が期待できるとも言われています。ただ、ガストー型の定義があいまいで、過去の論文でもどの程度の方までがこのてんかんに含まれるのかはっきりしないこと、まれな全身けいれんへの進展やてんかん性脳症の併発など非典型的な方々が含まれ、明確に自然終息性とも言いきれない部分があります。

予後

発作は発症から2~4年以内に寛解すると言われています。ただし、減量や断薬で視覚発作が再出現した場合には治療の再開が勧められます。

参考文献

  1. CHILDHOOD OCCIPITAL EPILEPSY (GASTAUT TYPE). ILAE(International League Against Epilepsy). EpilepsyDiagnosis.org. https://www.epilepsydiagnosis.org/syndrome/late-childhood-occipital-overview.html [2022.11.21閲覧]
  2. Gastaut型小児後頭葉てんかん(COE-G) 井上有史監訳. てんかん症候群 第6版. 中山書店, 2021:262-267.
  3. Panayiotopoulos CP. Elementary visual hallucinations, blindness, and headache in idiopathic occipital epilepsy: differentiation from migraine. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1999;66:536-540. PMID:10201433

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