てんかんと花粉症

てんかん

今年も花粉症のシーズンがやってきました。スギやヒノキの花粉は2月から4月にかけてピークを迎えますが、今年は例年より花粉の飛散量が多いと報道されております。花粉症の症状を和らげるためには抗ヒスタミン薬が有効ですが、てんかんがあると内服することに不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。

抗ヒスタミン薬はヒスタミンというアレルギー症状を引き起こす物質が作用する受容体をブロックするもので、H1~H4の4種類があります。

H1受容体は、中枢神経系に多く分布しており、ヒスタミンが結合すると興奮性を高め、覚醒状態を維持するために関与している物質のひとつです。また、平滑筋や血管内皮細胞などにも分布しており、こちらに作用するとアレルギー反応や炎症反応を引き起こします。

H2受容体は、胃粘膜などに多く分布しており、ヒスタミンが結合すると胃酸分泌を増加させます。胃薬としてH2ブロッカーという呼び名を聞いたことがあるかも知れません。

このようにヒスタミンは身体の中で様々な働きをしていますが、抗ヒスタミン薬はこれらの受容体にヒスタミンと競合して結合し、ヒスタミンの作用をブロックします。私たちの身体の中には血液-脳関門という、血液中の物質が容易には脳(中枢神経系)に入り込めなくするバリアが存在します。しかし、抗ヒスタミン薬の中には血液-脳関門を通過しやすいものもあり、これらの薬剤は中枢神経系のH1受容体にも作用し、眠気などの副作用を引き起こします。

抗ヒスタミン薬には第一世代と第二世代があり、第一世代抗ヒスタミン薬(d-クロルフェニラミンやシプロヘプタジン、プロメタジンなど)は血液-脳関門を通過しやすいため中枢神経系への移行が多く、第二世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジンやオロパタジン、エピナスチンなど)は血液-脳関門を通過しにくいため中枢神経系への移行は少なくなっています。

第一世代のものは眠気の副作用や痙攣発作のしきいを下げて発作を誘発する可能性があるため、てんかんの患者様には適していません。「てんかんの方は抗ヒスタミン薬を飲まない方が良い」と言われるのはこちらの薬剤のことを意図して言われているのだと思います。一方、第二世代のものは中枢神経系への影響が少なく、眠気などの中枢神経系の副作用を起こしにくいとされていますので、てんかんの患者様でも安心してお飲み頂けます

それでもご不安な方はプランルカストやモンテルカストと言ったヒスタミンではなくロイコトリエンというアレルギー物質をブロックするタイプの抗アレルギー薬や、点鼻薬や点眼薬などの局所治療薬で対応することも可能です。

ただ、花粉症症状により夜間の睡眠の質が悪化したり日中の眠気がでること自体がてんかん発作のリスクにもなりますので、個人的な意見としては抗ヒスタミン薬を使用してしっかりと花粉症症状を抑えることをお勧め致します。

てんかんを理由に抗ヒスタミン薬を処方してもらえなかった方は、てんかんの主治医にも一度ご相談されてはいかがでしょうか?

当法人の医療機関に通院中の患者様は、外来受診の際にご遠慮なく担当医までご相談ください。

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