概要
ジーボンス症候群(Jeavons症候群)は、眼瞼ミオクロニー(まぶたがピクピク動くこと)と欠神発作(突然動作を停止させて数秒〜数十秒間の意識消失)を特徴としたてんかん症候群であり、欠神を伴う眼瞼ミオクローヌス(Eyelid myoclonia with absence: EMA)とも呼ばれています。
本症候群は、特発性全般てんかんの中でも7.3%〜12.9%の割合で見られる稀なてんかん症候群です。目を閉じたり急に明るい光を受けることによって発作が誘発されやすく、脳波検査では光感受性(光刺激に反応した脳波変化)が認められます。
好発年齢
多くの方は幼児期から思春期にかけて発症し、平均発症年齢は7.8歳と報告されています。しかし、成人期になって発症される方も稀にいらっしゃるようです。
原因
原因は明らかではありませんが、特発性全般てんかんの家族歴を有することが多く、遺伝的な要因が関与している可能性が指摘されています。
また、最近では特定の遺伝子変異が患者に生じている可能性について報告されてきており、後頭葉皮質が病態に関与しているのではないかと推察されています。
発作・症状
最も特徴的な発作は、短時間(5-10秒)の眼瞼ミオクロニーと呼ばれるまぶたのピクツキ(眼球の上方視などの眼球運動を伴うこともある)で、短時間の欠神発作(動作を停止させて意識消失する発作)を伴うこともあります。
目を閉じたり明るい光を見たりすることで発作が誘発されることも特徴的です。
ほとんどの方が全身の強直間代発作を併発しますが、眼瞼ミオクロニー発作に比べると頻度は低いようです。
強直間代発作や欠神発作は気付かれやすいのですが、眼瞼ミオクロニー発作は非常にわかりづらく、本人も発作だと思っていなかったり、ビデオ脳波をじっくりと分析しなければ医師も気付けなかったりするため、診断が遅れることが多いと言われています。
診断
本症候群は、欠神発作を伴う(または伴わない)眼瞼ミオクロニー、閉眼によって誘発される発作やてんかん性の脳波異常、光感受性、の三つの特徴によって診断されます。
眼瞼ミオクロニーはこの症候群の最も特徴的な発作症状で、ビデオ脳波同時記録により発作時記録を確認できれば診断できますが、症状は非常にわかりにくいため本症候群を疑って記録を解析しないと見逃されることもあります。
脳波所見は全般性の棘徐波であり、目を閉じたり過換気をしたりすることで増強されます。
MRIや血液検査では異常所見は認められません。
治療
抗てんかん薬としてはバルプロ酸ナトリウム、エトスクシミド、ラモトリギン、レベチラセタムやベンゾジアゼピン系薬などがしばしば用いられますが、カルバマゼピンやフェニトインなどの抗てんかん薬は無効であるだけでなく、発作を増悪させる可能性がありますので注意が必要です。
また、誘因によって光刺激を避けるために日常生活ではサングラスや帽子を着用したり、テレビやコンピューター画面から一定の距離を保ち刺激をやわらげるなどの対応が推奨されます。
予後
予後は個人差が大きく、発作の頻度や重症度、治療反応性などによって異なります。
一般的な予後は良好ですが、眼瞼ミオクロニーは治療抵抗性であり、他の発作がコントロールされても成人期まで発作が持続することが多く、長期にわたって治療を必要とする可能性が高いでしょう。
おわりに
眼瞼ミオクロニーは非常にわかりづらく診断が難しいです。
小児欠神てんかんなどの欠神てんかんと診断されている方で光に関連してまぶたのピクツキを認める方は、発作かどうかわからなくても必ず主治医に伝えてみると良いでしょう。
また、まぶたのチックだと思っていても、ボーッとする症状を伴っていたり、これまでにけいれんを起こしたことがある方、チックだと思っている症状が明暗や開閉眼に関連して起きている場合は一度脳波検査をチェックした方が良いでしょう。
参考文献
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