小児欠神てんかん

てんかん

小児てんかんの約1割を占める比較的頻度の高い小児欠神てんかんについて解説します。

概要

小学校就学前後で発症することの多い連日複数回ぼーっとする発作(欠神発作)を生じるてんかんで、発作の時に特徴的な脳波所見を認めます。基本的に年齢とともに自然終息するてんかんです。

好発年齢

4~10歳、多くは5~7歳の小学校就学前後に発症し、やや女児に多いと言われています。

小児てんかんの約1割を占め、比較的頻度の高い小児てんかんです。

発作

欠神発作という、突然動作を停止してぼーっとする発作が特徴的です。1日複数回(数十~数百回)で連日認めます。

欠神発作は長くても数十秒で、突然始まって突然終わり、本人はその間の記憶がありません。目をパチパチさせたり口をもごもごさせたり直前の動作を繰り返したりする自動症が見られることもあり、発作が終わった瞬間からすぐに呼びかけに反応するため、周囲からは「ぼーっとしているだけ」に見えてしまいがちです。

本人は覚えていませんし、周囲からも気づかれにくいため、夜更かししているんじゃないか、ゲームのしすぎなんじゃないか、などと本人や保護者が責められてつらい思いをしていることもあります。

欠神発作により脱力したり転倒したりすることはないので、そのような症状が見られた場合は他の疾患を考えます。

また、思春期頃から全身のけいれん(強直間代発作)を起こすことがあるため注意が必要です。

診断

特徴的な病歴、発作、脳波所見により診断は容易です。

欠神発作は過呼吸により誘発できるため、脳波検査の時は必ず過呼吸をおこないます

図1のような、重ね合わせてもピタリと重なるような3Hzの棘徐波複合が典型的です。

過呼吸をしている場合は過呼吸の動作が止まるため発作時だとわかりやすいです。

図1 5歳女児 過呼吸賦活中に動作の停止を伴う3Hzの棘徐波複合を認めた。

治療

治療はバルプロ酸ナトリウムまたはエトスクシミドにより比較的容易に発作は抑制できます。ただし効果には個人差がありますのでどちらかが絶対に効く、というわけではなく少々おくすりの調整が必要な場合もあります。

エトスクシミドは欠神発作に非常に効果的ですが全身のけいれん(強直間代発作)を抑える作用はないため、強直間代発作を伴う場合はバルプロ酸ナトリウムを選択します。

思春期の女性でバルプロ酸ナトリウムが使いづらい場合はラモトリギンも選択肢になります。

カルバマゼピンやガバペンチンは欠神発作を悪化または誘発させることがあるため注意が必要です。

予後

小児欠神てんかんは年齢依存性てんかんと呼ばれる自然に終息するタイプのてんかんのひとつであり、治療後数年間発作を抑制して正常脳波が維持できていれば薬を減らしていきます。

通常12歳頃までには発作を起こさなくなると言われていますが、小児欠神てんかん発症からしばらくして思春期に強直間代発作を起こすことがあり、注意が必要です。

同様の欠神発作を起こすことのある思春期発症のてんかんに若年ミオクロニーてんかんや若年欠神てんかんなどがあり、治療や予後もやや異なってくるため鑑別が必要です。

また、典型的な年齢からはずれていたり、発達の遅れを伴う、筋肉のピクツキ(ミオクローヌス)を伴う、発症の前または早期から全身のけいれん(強直間代発作)を伴うなどの症状がある場合は小児欠神てんかんではない可能性が高いです。

日中にぼーっとする症状を頻繁に繰り返して受診しているが検査もされず診断されていない方、小児欠神てんかんと診断されているが薬により発作が抑えられていない方、治療していたが思春期に入って全身のけいれんを起こした方、小児欠神てんかんと診断されているが上記のような典型的でない症状をお持ちの方などは治療の見直しが必要であったり成人期に治療がまたがる可能性があるため、専門医に受診することをお勧めします

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