てんかんには様々なタイプがありますが、今回はその中でも比較的多く見られ、学童期~思春期と比較的若い世代で発症することの多い「特発性(とくはつせい)全般てんかん」について解説します。
「特発性全般てんかん」とは?
まず、少し言葉を分解してみましょう。
- 特発性: (歴史的には)明確な原因が見つからない、という意味で使われてきました。現在では多くの場合、遺伝的な要因(生まれ持った体質のようなもの)が関係していると考えられています。
- 全般: 発作が、脳の局所的な部分からではなく、広い範囲で同時に始まるタイプを指します。
- てんかん: 脳の神経細胞が一時的に過剰に興奮することで、「てんかん発作」を繰り返し起こす病気です。
つまり、「特発性全般てんかん」とは、「脳に明らかな原因は見当たらないけれど、体質的に、脳の広い範囲が興奮しやすい状態にあり、それによって発作を繰り返すてんかん」のグループということになります。
国際抗てんかん連盟による新しい分類では、遺伝的な要因が関わっていると考えられる全般てんかんは、本来「素因性(そいんせい)全般てんかん」というグループに分類されています。しかし、「特発性全般てんかん」という名称があまりにも歴史的に広く使われ、医師や患者さんの間で浸透していたため、後述する4つの代表的な症候群を指す名称として、新しい分類でも引き続き使われることになりました[1]。
このように、「特発性全般てんかん」は、いくつかの異なるてんかん症候群(病気のタイプ)をまとめたグループ名でありながら、それ自体が症候群名のように使われる、という少しややこしい位置づけにあります。
特徴は?
このタイプのてんかんは、主に小児期から青年期にかけて発症することが多く、以下のような共通した特徴があります。
- 知的発達は正常なことが多い: 多くの場合、知的な遅れは見られません。
- 予後は比較的良好: 適切な治療によって、多くの人で発作をコントロールすることができます。
- 脳波検査で特徴的な波形が見られる: 診断において脳波検査が非常に重要になります。
どんな症状(発作)が起こるの?
特発性全般てんかんでは、主に以下の3つのタイプの「全般発作」が、単独で、あるいは組み合わさって現れます。
| 発作の種類 | どんな症状? | 具体的な様子 |
|---|---|---|
| 欠神(けっしん)発作 | 数秒〜数十秒間、突然意識がなくなり、動きが止まる。 | ・会話の途中で、急にぼっとする ・一点を見つめて、呼びかけに反応しない ・発作が終わると、何事もなかったかのように元の行動に戻る |
| ミオクロニー発作 | 瞬間的に、手や腕、肩などが「ピクッ」と動く。 | ・朝起きた後によく見られる ・歯磨き中に歯ブラシを、食事中に箸を落とす ・本人は「びっくりしただけ」と思っていることも多い |
| 強直間代(きょうちょくかんだい)発作 | 意識を失って全身が硬直し、その後ガクガクとけいれんする。 | ・いわゆる「大発作」と呼ばれるもの ・突然倒れることがある ・発作後は、もうろうとしたり、眠ってしまったりすることが多い |
これらの発作は、睡眠不足や疲労、人によっては光の点滅(テレビやゲームなど)によって誘発されることがあります。
代表的な4つのタイプ
特発性全般てんかんは、発症する年齢や主な発作のタイプによって、主に以下の4つの症候群に分けられます。
小児欠神てんかん
- 発症年齢: 4歳〜10歳頃の学童期の子どもに多い。
- 主な発作: 1日に何回も起こる短い「欠神発作」が特徴です。
- 予後: 非常に良好で、60%のお子さんが思春期頃までに寛解する(発作がなくなり治療が不要になる)と報告されています[1]。
若年欠神てんかん
- 発症年齢: 9歳〜13歳頃の思春期に多い。
- 主な発作: 「欠神発作」が主体ですが、頻度は小児欠神てんかんより少ない傾向があります。多くの場合、「強直間代発作」も起こします。
- 予後: 発作は薬でコントロールしやすいですが、生涯にわたる治療が必要となることが多いです[1]。
若年ミオクロニーてんかん
- 発症年齢: 10歳〜24歳頃の思春期・青年期に最も多い。
- 主な発作: 朝の覚醒後などに起こる「ミオクロニー発作」が必ず見られます。ほとんどの人が「強直間代発作」も経験し、約3分の1の人に「欠神発作」も見られます[1]。
- 予後: 睡眠不足で発作が起こりやすいのが特徴です。薬で発作を抑えやすいですが、生涯にわたる治療が必要なことが多いです[1]。
全般強直間代発作のみを示すてんかん
- 発症年齢: 10歳〜25歳頃に多い。
- 主な発作: 発作は「強直間代発作」のみです。欠神発作やミオクロニー発作は見られません。
- 予後: 覚醒後2時間以内に発作が起こりやすい傾向があります。薬でのコントロールは良好ですが、治療は長く続ける必要があります[1]。
その他の関連するてんかん
上記の4つのタイプには当てはまらないものの、似た特徴を持つ「全般てんかん」も存在します。これらは前述の4つのてんかん症候群とは区別されますが、関連する症候群として知られており、明確に区別して診断することが難しい場合もあります。
- 眼瞼(がんけん)ミオクロニーを伴うてんかん: 主に学童期に発症します。目を閉じたり、光を浴びたりすると、まぶたがピクピクとけいれんする発作が起こります。知的発達は正常なことが多いですが、時に知的障害を伴うこともあります。発作は生涯続くことが多いですが、多くは薬でコントロール可能です[1]。
- ミオクロニー欠神発作を伴うてんかん: こちらも学童期に発症することが多いです。欠神発作中に、腕がリズミカルにピクピクと動くのが特徴です。知的障害を伴うことが多く、治療が難しい場合もあります[1]。
- 乳児ミオクロニーてんかん: 3歳未満、特に1〜2歳頃に短いミオクロニー発作で発症します。多くの場合、発達は正常で予後は良好とされています[1]。
診断と治療について
診断はどうやってするの?
診断で最も大切なのは、詳しい問診です。いつ、どのような状況で、どんな発作が起きたのかを、ご本人やご家族から詳しくお聞きします。
欠神発作やミオクロニー発作は、ご本人も周りの人も発作だと気付いていないことも多いので、具体的に質問することが重要です。欠神発作は、「よく、ボーッとしていることが多い、などと言われませんか」「人の話を聞いていて突然話が飛ぶようなことはありませんか」「(家族などに)話していて突然ボーッといて呼びかけに反応しなくなることはありませんか」などと質問します。ミオクロニー発作は、「朝ごはんなど食事中に突然手がピクついて箸や茶碗を落としたりすることはありませんか」と質問します。入眠時や疲労時に手足やまぶたなどがわずかにピクつくのは誰にでも見られる生理的ミオクローヌスですが、てんかん発作としてのミオクロニー発作は「ものを落とすほどの」ピクツキであることが特徴的です。
問診で症状をお聞きすると概ね診断は想像できるのですが、より診断を確からしくするために脳波検査を行います。脳波検査は、頭に電極を付けて脳の電気的な活動を記録する、痛みのない安全な検査です。特発性全般てんかんでは、特徴的な「全般性棘徐波」という波形が見られます。
多くの場合、脳の構造に異常はないため、典型的な特発性全般てんかんと診断できる場合にMRIなどの画像検査は必須ではありません。
どんな治療をするの?
治療の基本は、抗てんかん発作薬による薬物療法です。お薬を毎日きちんと飲むことで、脳の過剰な興奮を抑え、発作が起こらないようにします。
大切なのは、てんかんのタイプに合ったお薬を選ぶことです。特発性全般てんかんには効果的なお薬がある一方で、タイプによっては発作をかえって悪化させてしまう薬もあります。そのため、専門医による正確な診断が非常に重要になります。
<主に使用されるお薬の例>
- バルプロ酸ナトリウム: 幅広い全般発作に効果があり、古くから使われているお薬です。ただし、バルプロ酸ナトリウムを内服中に妊娠した女性から生まれた児の先天奇形のリスクは抗てんかん発作薬を内服していない女性と比較して有意に高いと報告されており[2]、思春期以降の妊娠可能な女性に対しては、胎児への影響を考慮して他の選択肢を検討します。
- レベチラセタム: 様々な発作タイプに効果が期待でき、特にミオクロニー発作に対して有効性が高いことが示されています[3]。また、副作用が比較的少ないとされており、抗てんかん発作薬の中では妊娠中に内服しても胎児への影響が低い薬剤の一つと考えられています[4]。
- ラモトリギン: こちらも幅広い発作型に有効です。欠神発作に対する有効性が認められますが、残念ながら効果はバルプロ酸やエトスクシミドに劣ることが示されています[5]。しかし、ラモトリギンを内服中の女性から生まれた児の先天奇形のリスクは抗てんかん発作薬を内服していない女性のリスクと同等であると報告されており、妊娠可能な女性にとって安全な選択肢となります[2]。
- エトスクシミド: 欠神発作に特に高い効果を発揮するお薬で、有効性と安全性の両面から小児欠神てんかんの第一選択薬として適しているとされています[5]。ただし、強直間代発作には効果があまり期待できないため、若年欠神てんかんのように両方の発作を合併するてんかんにはバルプロ酸やラモトリギンが選択されます[5]。
逆に、カルバマゼピンなどの一部のお薬は、欠神発作やミオクロニー発作を悪化させることが知られており、通常は使用されません[1, 6, 7]。最終的なお薬の選択は、発作のタイプ、年齢、性別、ライフスタイルなどから総合的に判断するため、治療がうまくいかない場合や副作用で困っている場合は専門医への相談を検討してください。
お薬の服用と合わせて、以下のような生活習慣も発作の予防につながります。
- 十分な睡眠をとる
- 規則正しい生活を送る
- 過度な疲労を避ける
- 薬を飲み忘れやすい場合は主治医と相談して内服のタイミングを調整する
予後と日常生活で大切なこと
特発性全般てんかんは、適切な抗てんかん発作薬による治療で、約8割の人が発作を十分にコントロールできると言われており、発作予後は良好です[1]。しかし、小児欠神てんかんを除き、お薬を中止した際の再発率は高いことが知られています。特に若年ミオクロニーてんかんでは、断薬後の再発率が78%にのぼると報告されています[1]。若年欠神てんかんや全般強直間代発作のみを示すてんかんも、生涯にわたる治療が必要となることが多く、自己判断での服薬の中断は非常に危険です。そのため、内服治療を続けながらも発作のない状態を維持し、可能な限り制限なく日常生活を送ることができるようにしていくことが治療の目標となります。
発作がコントロールされていれば、学業、仕事、運動、運転、結婚、妊娠・出産など、ほとんどの人が普通の社会生活を送ることができます。ただし、人生の大きなイベントである妊娠・出産や、社会生活に欠かせない運転免許の取得・更新などについては、正しい知識に基づいた計画と対応が不可欠です。これらは患者さんのてんかんの種類、治療内容や社会的状況によって対応が異なるため、自己判断せず必ず主治医に相談することが重要です。主治医で対応が難しい場合はてんかん専門医に紹介してもらうようにしましょう。
医療機関
参考文献
[1] Hirsch E, French J, Scheffer IE, et al. ILAE definition of the Idiopathic Generalized Epilepsy Syndromes: Position statement by the ILAE Task Force on Nosology and Definitions. Epilepsia. 2022;63:1475-1499.
[2] Petersen I, Collings SL, McCrea RL, et al. Antiepileptic drugs prescribed in pregnancy and prevalence of major congenital malformations: comparative prevalence studies. Clinical Epidemiology. 2017;9:95-103.
[3] Najafi S, Alavi MS, Sadeghnia HR. A meta-analytic evaluation of the efficacy and safety of levetiracetam for treating myoclonic seizures. Heliyon. 2025;11:e42244.
[4] Cerulli Irelli E, Cocchi E, Morano A, et al. Levetiracetam vs Lamotrigine as First-Line Antiseizure Medication in Female Patients With Idiopathic Generalized Epilepsy. JAMA Neurol. 2023;80(11):1174-1181.
[5] Brigo F, Igwe SC. Ethosuximide, sodium valproate or lamotrigine for absence seizures in children and adolescents. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2017;Issue 2. Art. No.: CD003032.
[6] Thomas P, Valton L, Genton P. Absence and myoclonic status epilepticus precipitated by antiepileptic drugs in idiopathic generalized epilepsy. Brain. 2006;129(Pt 5):1281–1292.
[7] Liu L, Zheng T, Morris MJ, et al. The mechanism of carbamazepine aggravation of absence seizures. The Journal of pharmacology and experimental therapeutics. 2006;319(2):790–798.










