てんかん発作の分類が2025年に変わりました — 新しい呼び方と、知っておきたいこと

てんかん発作の分類が2025年に変わりました — 新しい呼び方と、知っておきたいこと てんかん

2025年、国際抗てんかん連盟(ILAE)が「てんかん発作の分類」を8年ぶりに改訂しました。診察のときに主治医から聞く発作の呼び方が、これから少しずつ変わっていきます。

最初にいちばん大事なことをお伝えします。今回変わったのは「発作の呼び方・分け方」であって、病気そのものや、これまで受けてきた治療が変わったわけではありません。 呼び方が変わっても、同じ発作は同じ発作です。この記事では、何がどう変わったのかを、患者さんとご家族に向けてやさしく整理します。

そもそも「てんかんの分類」は3つの階層でできています

てんかんの診断は、次の3つの階層を順に確かめていく形で進みます(くわしくはてんかんの分類をご覧ください)。

  1. 発作型 — 一回一回の発作がどんなタイプか
  2. てんかん病型 — 焦点てんかん/全般てんかんなど、病気としてのタイプ
  3. てんかん症候群 — 発症年齢・脳波・経過などの特徴がそろった、名前のついた病型

これに加えて、病因(構造的・素因性・感染性・代謝性・免疫性・病因不明)と、発達や気分の問題などの併存症を合わせて評価します。

今回改訂されたのは、このうち 1. 発作型のところだけです。2の病型の枠組み(2017年版)と、3の症候群分類(2022年版)はそのまま使われます。

今回の改訂で変わった6つのこと

1. 「起始(onset)」という言葉がなくなりました

これまでは「焦点起始発作」「全般起始発作」と呼んでいましたが、「起始」が外れて 焦点発作全般発作 になりました。

これは、全般発作も実は脳のどこか一点から始まっていることを示す研究が積み重なり、「全般=どこからともなく一斉に始まる」という言い方が実態に合わなくなったためです。「起始不明発作」も 焦点/全般不明発作(焦点か全般かまだ決められない、という意味)という呼び方になりました。

2. 「意識」を基準に分けるようになりました

2017年版では「awareness=発作中のことを覚えているか」を基準にしていましたが、2025年版では consciousness(意識) を基準にします。そして意識を、次の2つの要素の両方で判断します。

  • 覚えているか(awareness)— 発作中の出来事を後から思い出せるか
  • 反応できるか(responsiveness)— 呼びかけや指示に、いつも通りに応じられるか

このため、発作の名前は 焦点意識保持発作(意識が保たれている)と 焦点意識減損発作(意識が損なわれている)になりました。かつて使われていた「単純部分発作」「複雑部分発作」に、言葉の感覚としては近づいたと言えます。

ここで知っておいていただきたいのは、目が開いていて、受け答えしているように見えても、意識が損なわれていることがあるという点です。反応が普段よりはっきり遅い場合も「反応できていない」と判断します。また、どちらか一方しか確かめられず、それが損なわれていた場合には、安全側に立って「意識減損」として扱います(運転の可否などにかかわるためです)。

3. 「運動症状/非運動症状」という分け方をやめました

代わりに 「まわりから見てわかる症状があるか、ないか」(観察可能/観察不能な症状)で表すようになりました。

これまで欠神発作は「非運動」に分類されていましたが、実際にはまばたきや口・手の細かい動きを伴うことが多く、分け方が実態と合っていませんでした。新しい表現なら、専門的な検査ができない場面でも、目撃した人の証言だけで書き分けられます。

4. 発作の様子を「起きた順番」で書くようになりました

これまでは最初に現れた症状だけで発作を代表させていましたが、これからは症状を時間の流れに沿って書き並べます。たとえば「みぞおちの違和感 → 口をもぐもぐさせる動き+右手のこわばり → 呼びかけへの反応が鈍くなる」というように記録します。

発作がどこから始まってどう広がったかが分かりやすくなり、手術を検討するときの評価にも役立ちます。

5. 発作型が63種類から21種類に整理されました

2017年版では63種類あった発作型が、2025年版では21種類にすっきりまとめられました。細かすぎて使いにくいという声が世界中から寄せられていたためです。

6. 「てんかん性陰性ミオクローヌス」が発作型に加わりました

ミオクロニー発作が筋肉の一瞬の「ぴくつき」であるのに対し、陰性ミオクローヌスは逆に、力が一瞬「すとんと抜ける」発作です。以前から知られていた現象でしたが、今回あらためて独立した発作型として認められました。

新しい分類の全体像(基本版)

日常の診療で使う「基本版」では、発作はまず次の4つの大きなグループに分けられます。

主要クラス 分け方 含まれる発作型
焦点発作 意識で分ける 焦点意識保持発作/焦点意識減損発作/焦点起始両側強直間代発作
焦点/全般不明発作 意識で分ける 意識保持発作/意識減損発作/両側強直間代発作
全般発作 発作の種類で分ける 欠神発作/全般強直間代発作/その他の全般発作
分類不能発作 てんかん発作であることは確かだが、判断材料がない場合

くわしい「拡張版」では、全般発作がさらに、定型欠神発作・非定型欠神発作・ミオクロニー欠神発作・欠神を伴う/伴わない眼瞼ミオクロニー・全般強直間代発作(ミオクロニー強直間代発作、欠神強直間代発作を含む)・ミオクロニー発作・陰性ミオクロニー発作・間代発作・てんかん性スパズム・強直発作・ミオクロニー脱力発作・脱力発作に分けられます。

なお、強直間代発作(けいれん発作)は、焦点発作・焦点/全般不明発作・全般発作のどのグループからも起こりえます。もっともけがや事故につながりやすく、SUDEP(てんかんによる予期せぬ突然死)の最大の危険因子でもあるため、公式の図でもこの3つが横一列に強調されています。

呼び方の対応表

これまでの呼び方 2025年版の呼び方
焦点起始意識保持発作 焦点意識保持発作
焦点起始意識減損発作 焦点意識減損発作
焦点起始両側強直間代発作 焦点起始両側強直間代発作(変更なし)
全般起始発作 全般発作
起始不明発作 焦点/全般不明発作

さらに古い言葉をお持ちの方は、次のように読み替えてください。

1981年版の呼び方 2025年版の呼び方
単純部分発作 焦点意識保持発作
複雑部分発作 焦点意識減損発作
二次性全般化発作 焦点起始両側強直間代発作

診断名の書き方が変わっても、心配はいりません

診療情報提供書や学校・職場への書類で、発作の呼び方がこれまでと違って書かれることがあります。これは分類の言葉が新しくなっただけで、病気が変わった/悪くなったという意味ではありません。処方されている抗てんかん発作薬の選び方や治療の方針も、この改訂によって変わるものではありません。

書類の表現が気になるときや、以前の診断名との対応が分からないときは、遠慮なく主治医にお尋ねください。

ご家族・目撃した方にお願いしたい観察のポイント

新しい分類は「覚えているか」「反応できたか」を重視します。これは検査だけでは分からず、そばにいた方の証言がこれまで以上に大切になったということです。発作を目撃したら、次の点を思い出せる範囲でメモしておいてください。

  • 呼びかけに反応があったか — 可能なら「手を握って」など簡単な指示を出してみて、応じられたか
  • 後から本人が覚えているか — 落ち着いてから「さっきのこと覚えている?」と聞いてみる
  • どの症状がどの順番で起きたか — 最初の様子と、その後の変化
  • 体の左右どちらに症状が出たか — 顔・手・足のどちら側か
  • どのくらい続いたか
  • できれば動画を撮る — ただし発作時の対応のとおり、安全の確保が最優先です

なお、てんかん発作とまぎらわしい症状はほかにもあります。突然のけいれんがすべててんかんとは限らず、区別には脳波検査などが役立ちます。

受診の目安

次のようなときは、早めに医療機関にご相談ください。

  • 意識を失う発作や、けいれんを伴う発作が初めて起きたとき
  • 発作の型や頻度がこれまでと変わってきたとき
  • 服薬を続けているのに発作が抑えられないとき
  • ぼんやりする、一瞬手の力が抜けるなど、発作かどうか判断に迷う症状があるとき

てんかんは、発作の型を正しく見極めることが治療選択に直結する病気です。気になる症状があるときは、かかりつけの先生や、てんかんを専門とする医療機関・専門医へのご相談をおすすめします。

参考文献

  1. Beniczky S, Trinka E, Wirrell E, et al. Updated classification of epileptic seizures: Position paper of the International League Against Epilepsy. Epilepsia. 2025;66(6):1804–1823. doi:10.1111/epi.18338(オープンアクセス/CC BY 4.0)
  2. Beniczky S, Trinka E, Wirrell E, et al. A practical guide to the updated seizure classification 2025. Epileptic Disorders. 2025. doi:10.1002/epd2.70110
  3. International League Against Epilepsy. Updated classification of epileptic seizures (2025). https://www.ilae.org/updated-classification-epileptic-seizures-2025
  4. 上記1の Data S6(公式日本語訳を含む多言語対訳表)
  5. Fisher RS, Cross JH, French JA, et al. Operational classification of seizure types by the International League Against Epilepsy: Position Paper of the ILAE Commission for Classification and Terminology. Epilepsia. 2017;58(4):522–530.
  6. Scheffer IE, Berkovic S, Capovilla G, et al. ILAE classification of the epilepsies: Position paper of the ILAE Commission for Classification and Terminology. Epilepsia. 2017;58(4):512–521.
  7. Specchio N, Wirrell EC, Scheffer IE, et al. International League Against Epilepsy classification and definition of epilepsy syndromes with onset in childhood: Position paper by the ILAE Task Force on Nosology and Definitions. Epilepsia. 2022;63(6):1398–1442.
  8. 日本神経学会(監修). てんかん診療ガイドライン2018. 医学書院.